卵殻膜で「肌の奥まで浸透」は損する?論文で分かった化粧品選びの意外なポイント

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「卵殻膜が肌に良い」という話は、少しずつ広まってきました。
しかし、本当に効果のある卵殻膜化粧品の選び方はあまり知られていません。

これまでに私たちがご紹介してきたポイントは2つ。

  • 濃度」に注意。
    臨床試験では8~10%高配合したクリームでシワ改善効果あり。
  • 卵殻膜エキス」の表示に注意。
    卵殻膜が少しでも入っていれば「エキス」と言ってOK。買ったらとても薄いエキスだった…という場合も。

さらに近年では、卵殻膜の効果に大きく関わる研究結果が出てきたのです。

本記事では、美容大国・韓国の論文から、その研究結果を分かりやすく解説し、化粧品選びのポイントまで解説していきます。

見終わった頃には、卵殻膜の選び方が根本から変わる、大切な知識です。
ぜひ最後までご覧ください。

目次

卵殻膜の効果を決める要因が明らかに

早速ですが、専門家が驚いた結論からお伝えします。

一般的に、化粧品の有効成分は、分子が小さいほど効果を発揮すると言われています。

しかし、卵殻膜はその逆。
分子が大きいほど、強力なシワ関連効果を示したのです。
(分子量:分子の大きさ)

一般的に化粧品成分は小さいほど効果が高いが、卵殻膜は大きいほど効果が高い

この情報は、Korean Journal for Food Science of Animal Resources という韓国の論文誌に掲載された2つの研究によるものです。

それぞれの研究を簡単にご説明します。

研究1

卵殻膜を分子の大きさによって3種類に分け、それぞれ細胞レベルでコラーゲン・エラスチンへの効果を調べた。

その結果、卵殻膜の分子が大きいほどコラーゲン及びエラスチンの分解を抑えた

卵殻膜の分子が大きいほど、コラーゲンの分解を抑えたことが分かるグラフ
卵殻膜の分子が大きいほど、エラスチンの分解を抑えたことが分かるグラフ

参考:Effects of Egg Shell Membrane Hydrolysates on Anti-Inflammatory, Anti-Wrinkle, Anti-Microbial Activity and Moisture-Protection のグラフを一部改変

研究2

卵殻膜のうち、分子量が最も大きいグループが、シワの原因となるコラーゲン量・ヒアルロン酸産生量・コラーゲン分解抑制において最も高い効果を示した。
そこで、光老化によって皮膚が分厚くなるマウスを使って実験を行った。

その結果、以下の効果が明らかになった。

  • 分子量が大きい卵殻膜は、光老化が起こっていないときと同レベルまで、皮膚の肥厚(分厚くなること)を防いだ
  • また、光老化によって悪化する、水分量(保湿力)表皮の水分喪失(バリア機能)紅斑値(炎症・赤み)メラニン指標(色素沈着)の4項目も卵殻膜によって改善した。

参考:Effects of Egg Shell Membrane Hydrolysates on UVB-radiation-induced Wrinkle Formation in SKH-1 Hairless Mice のグラフを一部改変

一般的に、化粧品は「分子が小さいほうが肌に浸透しやすい」と考えられています。
しかし、今回の論文では、分子の大きな卵殻膜がより強力だという結果に。

なぜ、肌に浸透しないはずの大きな分子が、なぜ最も強力な効果を示したのでしょうか?

実は、これが卵殻膜本来の力に関わっているのです。

卵殻膜は浸透せずにシワ改善効果を発揮する

ここで、化粧品業界ではよく知られる「500ダルトンルール」についてご紹介します。(ダルトン:成分の大きさを表す単位)

「500ダルトンルール」の概要

  • 有効成分を肌に効かせるには「浸透」させる必要がある。
  • 分子の大きさが500 Da(ダルトン)以下でなければ、有効成分は健康な皮膚のバリアを通過しにくい。

Da:ダルトン。成分の大きさを表す単位。

論文で使われた卵殻膜は10k(=10,000)ダルトン以上だったので、その大きさは20倍以上
500ダルトンルールよりも遥かに大きく、皮膚の奥まで浸透しそうもないことは明らかですね。

では、なぜ浸透しないはずの卵殻膜が肌に働くのか?
ここで浮かび上がってきたのが、「卵殻膜は皮膚の内側ではなく、外側から肌に働きかける」という新しい仕組みです。

卵殻膜は皮膚の外側から肌に働きかける

卵殻膜の大きな分子が、皮膚の表面に近いところに留まることで

  • 肌に膜を張ってバリア機能を助ける
  • コラーゲンやエラスチンの分解を防ぐ

このような働きについて論文で考察されています。

言い換えると、「卵殻膜を肌の奥まで浸透させよう!」といって卵殻膜を分解するのは、シワ関連の働きには逆効果とも考えられます。

分子量が小さくなると、本来の効果が失われてしまう可能性があるからです。

卵殻膜は短く切らないと化粧品に配合できない?

ここまで、「卵殻膜は分子が大きくないと本来の力を発揮できない」ということをお話してきました。

しかし、こんなことを思った方もいるでしょう。

それなら最初から、卵殻膜を大きいまま化粧品に配合すればいいだけじゃないの?

ここで、現実問題として知っておくべきことがあります。
実は、卵殻膜は、そのままだと化粧品に配合するのが難しいのです。

卵殻膜はそのままだと水にも油にも溶けず、化粧品に配合するのはほぼ不可能。

スーパーで買った卵の殻から卵殻膜を剥がしてアルコールに浸す「手作り卵殻膜化粧水」が話題になったことがありますが、エキスが抽出できる可能性はとても低いとされています。

そこで、色々な会社が企業努力を重ねた結果、「加水分解」という技術で卵殻膜を小さな断片にすることに成功。
水やグリセリンなどに溶けやすくなったことで、化粧品に配合できるようになりました。

すごい技術が使われているのは分かったけど…
卵殻膜は大きくないと本当の効果が出せないのに、小さくしないと配合できないってこと?

じゃあ、どうやって本当に効果のある卵殻膜化粧品を選んだらいいの?

次はこんな疑問にお答えします。

結論:卵殻膜化粧品はこう選ぶ

  • 化粧品に配合できる程度には分解されているが
  • 本来の効果を発揮できるよう、細かく分解されすぎていないもの

こんな卵殻膜を見つけましょう。

「そんな上手い話があるの?」と思うかもしれませんが、あります。
ここ数年で、卵殻膜の加工技術はどんどん進化しているからです。

そこで、私たちドクターズチョイスから、優れた卵殻膜を見極める「専門的なポイント」を3つお伝えします。

ポイント1:配合された卵殻膜の製造元を調べる

企業によっては、自社の卵殻膜がどのくらいの大きさなのか、その分子量を公開しているところがあります。

少なくとも3 kDa以下のものは除外して、できれば10 kDa以上の卵殻膜が多く含まれているものを選ぶと良いでしょう。

ポイント2:特許情報を調べる

特許技術によって製法が守られていれば、その技術レベルは少なからず信頼できます。

高い技術力によって、分子の大きさを残しながら、化粧品にも配合できるよう製造されたものを見つけましょう。

ポイント3:臨床試験や論文を調べる

一部のブランドは、そのエビデンス(科学的根拠)を証明するために論文発表を行っています。

論文に記載されている配合量が、化粧品でも再現されていれば、信頼度は上がるでしょう。

世界的に有名な卵殻膜ブランド一覧

ここまでにお伝えした3つのポイントを踏まえて、世界的に有名な卵殻膜ブランドがどのような情報を公開しているのか、比較表にまとめました。

スクロールできます
ブランド名 / 企業名主な用途特許情報分子量その他関連情報(シワ改善エビデンス)
Ovoderm / Eggnovo S.L.
(スペイン)
経口摂取(サプリメントなど)ES 2 181580 B1
ES 2 327087 B2
非公開多数の臨床試験(in vivo)あり。
300mg日の経口摂取で、皮膚の弾力性(12~13.3%向上)、ハリ(65.8%向上)、皮膚疲労の軽減を実証。
シワ改善への強い関連性を示唆。
BiovaDerm / Biova LLC
(米国)
外用(クリームなど)US82114773~200kDa局所適用の臨床試験で、シワの深さの有意な減少を実証 。
8週間の使用でコラーゲン産生促進(in vitro)とシワの深さの減少(in vivo)を確認 。
NEM® / Stratum Nutrition
(米国)
経口摂取(サプリメントなど)US8580315B2非公開主に関節の痛みやこわばりに関する豊富な臨床エビデンス 。
皮膚や髪への言及はあるが、シワ改善に特化した主要な臨床データはなし。
OVOLUX™ / Stratum Nutrition
(米国)
経口摂取(サプリメントなど)不明非公開2024年の臨床試験で、6週間以内に皮膚のハリ、水分量、弾力性の改善、特に目尻のシワの減少を実証。
株式会社アルマード
(日本)
外用(美容液)
経口摂取(サプリメントなど)
特許5184257非公開III型コラーゲン(ベビーコラーゲン)のサポートに焦点を当てた論文発表と製品展開。
東京大学との共同研究。

Ovoderm / Eggnovo S.L. (スペイン)

特許取得済みの「水系分離技術」を使用。
化学溶剤を一切使用せず、ESMの天然マトリックス構造を維持することを特徴としています。

分子量は大きいことが予想されますが、基本的には経口摂取での研究結果のみ紹介されています。

BiovaDerm / Biova LLC (米国)

特許技術「Hydro5™」を用いた「水溶性卵殻膜(WSEM)」。
アルカリ加水分解(5% NaOH)と分子膜ろ過(Molecular membrane filtration)を組み合わせた技術を使っています。

関連特許(US8211477)には、製品が「3 kDaより大きく約200 kDa未満以上の分子量を持つ」ことが明記されており、論文で報告された10 kDa以上の分子が多く含まれているのは明らかです。

また、製造プロセスで「3, 6, 10, 50, 100 kDa」の膜を使い、シワ関連の効果が大きい10kDa以上の画分を意図的に残していることが分かります。
臨床試験でも保湿クリームに混ぜて、シワ改善の効果が実証されています。

現時点で、世界的に有名な卵殻膜ブランドの中でも、分子の大きい卵殻膜だとはっきり分かる唯一のブランドです。

社内試験をしてみた結果…

以前、何社かの卵殻膜を比較したことがありますが、他社の卵殻膜と比べるとBiovaDermは少し溶けにくいです。

言い換えれば、「分子量が大きな卵殻膜が入っている」ということの証明と言えるでしょう。

その後、混ぜる時間を長くしたり、少し放置しておくことで、問題なく水に混ざることを確認しています。一部のオイルベース化粧品には溶けない場合もあります。

NEM® / Stratum Nutrition (米国)

「部分的加水分解」を使用した卵殻膜。
20年以上の研究と特許蓄積があり、主に「関節の健康」市場向けに展開されています。

主に関節の痛みやこわばりについて、豊富な臨床エビデンスがあります。
主な使い方は経口摂取となっており、サプリメントなどに利用されることが多い卵殻膜ブランドです。

OVOLUX™ / Stratum Nutrition (米国)

「NEM®」を製造するStratum Nutrition社による、卵殻膜の新ブランドです。

関連特許は見当たりませんが、すでにNEM®で特許を取っていること、また2024年の新しい臨床試験で確かな効果が実証されていることから、確かな加工技術があると考えて良さそうです。

これもNEM®と同様に、経口摂取がメインの利用方法になっています。

株式会社アルマード (日本)

日本で最も有名な卵殻膜の企業といえば、テレビCMでもお馴染みのアルマード。

東京大学との共同研究をアピールしており、III型コラーゲン(ベビーコラーゲン)のサポートに焦点を当てた製品展開を行っています。
分子量については非公開となっています。

製品は、サプリメントやドリンクなどの経口摂取化粧品による外用など様々なラインナップが揃っています。

まとめ:化粧品ならこの3つのポイントで見極めよう

「卵殻膜が肌に良い」という話は少しずつ知られてきましたが、本当に良い卵殻膜、特に化粧品に適したものを見極めるのは大変です。

今回の論文で分かった分子の大きな卵殻膜分子が強い活性を持つという事実は、化粧品の世界で特に重要なカギになるでしょう。

  • 卵殻膜が何%配合されているか?(濃度)
  • 「卵殻膜エキス」という表示がある場合、エキスの中には卵殻膜が何%入っているか?(表示)
  • 分子が大きい卵殻膜が配合されているか?(加工)

濃度、表示、加工。
私たちの記事などを参考に、この3つのポイントに気をつけて商品を選んでみてください。

あなたに一番効果のある卵殻膜化粧品が見つかれば幸いです。

卵殻膜パウダー開発中

ドクターズチョイスでは、今回の調査結果を元に、分子の大きい卵殻膜を、お好きな濃度に調整できる「卵殻膜パウダー」の開発を進めています。

ぜひ、続報をお待ちいただけますと幸いです。

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